2009年10月25日 | 庵治町 | ⇒ | 白峰 | ⇒ | 休暇村五色台 | |||
坂出市青海町 白峰寺 | 8:56〜12:20 | 14:25〜15:18 | 15:48〜16:25 |
御陵から白峰寺の道。杉木立。
白峰寺からはお遍路さんが石段を下りている。えいちゃんは左に行く。
ここが、頓証寺(とんしょうじ)。
(頓証寺)
崇徳上皇崩御後、都では変事が続き、上皇の霊を祀る御廟所が建てられた。
頓証寺本堂の隣に↓、
西行法師が「法施奉りける」に
「御廟震動し」と立て札の案内板がある。
(頓証寺)
法施を奉る西行法師の石像。
(頓証寺)
終夜供養したてまつらばやと。御墓の前のたひらなる石の上に座をしめて。經文徐に誦しつゝも。かつ哥よみてたてまつる
松山の浪のけしきはかはらじをかたなく君はなりまさりけり
(雨月物語・白峰)
崇徳上皇の死の3年後、西行はここで一夜の供養をすることにした。
(頓証寺)
日も暮れて月が出ても、木々の葉が邪魔をして光も射さず、眠るとも起きるともなく、ただうとうとしていた西行。
露いかばかり袂にふかヽりけん。
日は没しほとに。山深き夜のさま常ならね。
石の牀木葉の衾いと寒く。神清骨冷て。物とはなしに凄じきこゝちせらる。
月は出しかと。茂きが林は影をもらさねば。あやなき闇にうらぶれて。眠るともなきに。まさしく圓位/\とよぶ聲す。
眼をひらきてすかし見れば。其形異なる人の。背高く痩おとろへたるが。顔のかたち着たる衣の色紋も見えで。こなたにむかひて立るを。
西行もとより道心の法師なれば。恐ろしともなくて。こゝに來たるは誰と答ふ。
(雨月物語・白峰)
その時、
「円位よ、円位」と呼ばれた声に見上げた姿は・・・・・・・・
背は高くやせ衰えて、容貌も衣類の色もはっきりとは見えない・・・・・・おばけのような男が立っていた。
(頓証寺)
男は崇徳上皇の亡霊だった。
西行の参拝を喜び、今「日本国の大魔縁」となり近頃起きている世の動乱はすべて自分が起こしていることを話した。
近來の世の乱は朕なす事なり。
生てありし日より魔道にこゝろざしをかたふけて。平治の乱を發さしめ。死て猶朝家に祟をなす。
見よ/\やがて天が下に大乱を生ぜしめんといふ。
西行此詔に涙をとゞめて。こは浅ましき御こゝろばへをうけ給はるものかな。
君はもとよりも聡明の聞えましませば。王道のことわりはあきらめさせ給ふ。こゝろみに討ね請すべし
(雨月物語・白峰)
西行は涙を流しつつ、
道理に合う考えか、それとも自分の欲望であるのか、どっちなのかおしえてほしいと尋ねた。
(頓証寺)
上皇の亡霊は、
天下のことを後宮の女に相談したのは父の罪であること。それでも生きているうちは孝の心を守ったこと。
讃岐に流されて以後は幽閉され、一日三度の食事を運んでくる以外誰ひとり訪ねる人もいないこと。
自分は都へ永遠に帰れない、都へ飛べる浜千鳥がうらやましくて泣けてくる。
濱千鳥 跡はみやこにかよへども 身は松山に音をのみぞ鳴
終に大魔王となりて。三百余類の巨魁となる。
朕けんぞくのなすところ。人の福を見ては轉して禍とし。世の治るを見ては乱を発さしむ。
西行いふ。
君かくまで魔界の悪業につながれて。佛土に億万里を隔給へばふたゝびいはじとて。只黙してむかひ居たりける。
時に峯谷ゆすり動きて。
風叢林を僵すがごとく。
沙石を空に巻上る。
魔道の浅ましきありさまを見て涙しのぶに堪す。復び一首の哥に随縁のこゝろをすゝめたてまつる
よしや君 昔の玉の床とても かゝらんのちは何にかはせん
(雨月物語・白峰)
「あの憎き敵どもを全て瀬戸内海に沈める」
亡霊の声は峰谷に響き、その凄さは言葉で言い表すことも出来ない。
西行は死んでしまったら天皇も平民も変わりがないことを詠んだ。
刹利も須蛇もかはらぬものをと。心あまりて高らかに吟ける。此のことばを聞しめして感させ給ふやうなりしが。御面も和らぎ。陰火もやゝうすく消ゆくほどに。つひに龍體もかきけちたるごとく見えずなれば。化鳥もいつち去けん跡もなく。
ほどなくいなのめの明ゆく空に。朝鳥の音おもしろく鳴わたれば。かさねて金剛經一巻を供養したてまつり。山をくだりて庵に帰り。
(雨月物語・白峰)
西行の言葉に感心したのか、亡霊の表情も和らぎ、陰火も次第に薄くなって消え、とうとう見えなくなった
まもなく夜が明けて、空に鳥の声が聞こえてきた。
2009年10月30日