6 公害


とにかく新たに笠岡沖に陸地ができることになるのである。
海岸低地の皆無に近いこの地域としては、まことに結構なことであるにちがいない。

だがこの西側にあたって、現在五つの鋼管の高炉が稼動しているのである。おそらくここでもこれを中心にコンビナート化が進むにちがいない。

そうした場合、ここに拡張された陸地は、福山から倉敷に通ずる大きな風谷をつくって、東に向かってひどい工場ガスを流すことになるだろう。

いま、福山地区の工場ガスは井原方面の大気汚染をおこしつつある。
それはいうまでもなく地方風である海風のためのものであると思われるが、それが南に陸地がひろがれば、海風はそれに向かってふかれることになるから、井原方面としては大いに助かるのであるが、山陽線の谷筋は定風の西風に加うるに、西からの海風にあふられて、鋼管の工場ガスをまともに引き受けねばならんことになりそうである。
まあ、谷が広くて抜けているから、あるいは水島の場合ほどはさわがれんですみはしないかと考えられる。

さらにこれと似たことが沿岸海域におこりうるということである。
それはいままでスムーズにおこっていた海水の流れ、いうなれば沿岸流が、人工陸地によってさまたげられることになって、沿岸海水の浄化がおこなわれにくい海域が生じる、そのところに加うるに工場廃液の流入が加わることになるから、海水の汚濁もひどくなるのは必定であるといわねばなるまい。

以上いった工場ガス、同廃液はいずれも、いまいわれている公害問題のもとである。

【続く】

2001年4月29日