理散歩」 昭和52年9月1日初版宗田克巳著

 笠岡の県境付近の変貌1

笠岡の県境付近の展望

国道二号線が市街地を西に離れると、海岸を走ることになるが、しばらくで小さな入江を橋でで渡ることになる。この入江こそ天然記念物カブトガニの繁殖地金浦湾である。

またこの湾岸に櫛比する瓦屋根の集落が西浜と書いてヨウスナと読ませる漁村で、備中西部の食膳に新鮮な魚介を提供してくれ、われわれにとっては極めて親しみのある集落である。

さらに短いトンネルをくぐって、小さな谷を横切ることになる。この谷一帯を大宣というが畑地に囲まれた谷川の散村は県南としては、異様なまでにわれわれの目うばう光景である。

だがこのような景観は地表の開折極めて進行した壮年末期のものであって従順地形と言ったらよいものであろう。さらにいうなれば、いわゆる吉備高原はかかる地形のままのものが、今の高度に隆起したものと解することができる。
かくいうものの、この国道以南の山地は、一つの地塊山地であって、南と北を断層で切られ、南は海、北は低地で限られることにより、地形的にまとまっている地域であろうことは地図上でもはっきりする。


しかもよく見ると海に面しては高く、低地に面しては漸次
低下するという傾動く地塊であって、低地に面する側に前述の低夷な従順地形が明瞭に見られるのである。

この低夷丘陵の標高は50メートル内外であるのだが、海に面する側で開折の進んだピークは150メートル内外のコミカルなものであって、しかもそれがいくつも海岸線に沿うて並んでいて、狭い地域に極めて対照的な地形発達を示しているのである。
これらコミカル丘の間にひとつの入江が生じいて、茂平湾と呼ばれている。


旧城見村の茂平がこの湾頭に控えている。


【続く】