「コピーならしときます。」


呉事務所には当時の事務所規模にしては珍しくコピー機があった。
但しスッシキ。

アンモニア式の青焼きも隣りにあり、これは大きく現場事務所(工事事務所と呼んでいた)だけでなく出張所扱いのIHI事業所からも設計の人などがきていた。

コピー室は一階にあり、ある日コピーしようと思って行くと、たまたま混んでいた。

コピー待ちの現場事務所からきていたおばさん、僕を見て「コピーならしておきますよ。」と笑顔で言う。
じゃ、と頼んで二階に帰るとしばらくしておばさんは持ってきてくれた。


何日か経ったある日、上司である総務課長から呼ばれた。
「Sさんにコピーを頼むとは。『新人なのに私にコピーをさせる』と本人も怒っていた。うんぬん」と注意。

これにはびっくりした。今まで見てきたSさんの笑顔は何だったのだろう。
今回の事も頼んだ記憶もない、向うからの親切と思ってありがたく甘えた。しかもコピー量はわずか。

先輩のTさんとの飲み屋。
Tさん「Sはああいうう人なんじゃよ。」と軽く言う。

ああいう人がいる。そういう社会勉強になった人であった。

2002年3月24日

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