枕もとのハーモニカ


三年生の頃、城見小の音楽ではハーモニカの勉強があった。

僕は特別きらいなのが音楽と、運動会の遊戯(踊り)だった。


ハーモニカは家にあったものを学校に持っていった。そのハーモニカはその前兄が使い、更に前は姉が使い、またその前は????という物だった。

表面のしんちゅうはヘッコミ、ハーモニカの二十なんぼかある穴には幾年にもわった唾がふさぎ音がでない、というハーモニカを持って授業を受けていた。
まったく情けないハーモニカであった。


冬の日、両親は暗い内に起きてほうれん草を出荷していた。その年ほうれん草の相場が良かったのか、そのお金で火鉢を買った。
火鉢は陶器のでなく金属の火鉢であった。

そしてある朝、僕の枕もとには「宮田東峰先生のハーモニカ」が置いてあった。
ハーモニカが入った箱を僕は何度もなんども見た、そして開けた。
箱から出たハーモニカはフックラとした厚みがあった。


そして音楽の時間が待ちどうしくてしかたがなかった。
大嫌いな音楽の時間が待ちどおしい、音楽の時間が好きだったのはこの、ハーモニカを学校に持っていける何ヶ月間だけに終わってしまった。

いまでも僕が弾ける楽器は、カスタネット以外には無い。


2000年11月18日