戦争は知らない


大学三年の頃、笠岡市民病院に入院中の父を見舞った事がある。

父の枕もとのラジオからフォークル(フォーク・クルセダース)の歌が流れていた。

野に咲く花の名まえは知らない。だけど野に咲く花がすき、帽子にいっぱい摘みゆけばなぜか、涙が、涙が出るの。

小学生の僕に祖父はよく「ふみ(父の名)は戦争中に病気になって四十五くらいまでしか生きられないと言われた」と言っていた。
その時、父は既に五十を超えていた。

戦争は知らない
寺山修司 作詞
加藤ヒロシ 作曲
野に咲く花の名前は知らない
だけども野に咲く花が好き
ぼうしにいっぱいつみゆけば
なぜか涙が涙が出るの
戦争の日を何も知らない
だけど私に父はいない
父を想えばああ荒野に
赤い夕陽が夕陽が沈む
いくさで死んだ悲しい父さん
私はあなたの娘です
二十年後の故郷で
明日お嫁にお嫁に行くの
見ていて下さいはるかな父さん
いわし雲とぶ空の下
いくさ知らずに二十才になって
嫁いで母に母になるの












2000年10月20日