さみしいツバメ


梅雨の前の時期になるときまって家にツバメがきていた。

ツバメは毎年きていた。ツバメの巣は土で出来ていて毎年それを使っていた。
玄関の土間の天井にその巣はあった。

ツバメはその巣で子供を産んでいた。4〜6羽くらい。毎年。
親ツバメが帰るといっせいにどの子ツバメも口を広げ上につんあげていた。
親ツバメは順番にエサを子ツバメに与えていたのがわかった。

林の小鳥の巣、軒先の雀の巣、それをみつけ卵を取るのは子供の遊びであったが。
ツバメ。それはなにか神聖なところがあった。

保育園の紙芝居でみる「親指姫」のツバメ、小学校で習う「田圃や稲の虫を食べる」良い鳥、益鳥。
なにより、毎年決まって天下御免で家の中に訪れる鳥。この鳥にはさわってはいけないところがあるように感じていた。


昭和36年僕が中学1年の時、家は麦藁屋根の家から瓦屋根の家に新築した。そして玄関戸もできた。それにより玄関戸を閉める時も発生していた。
その初夏、いつものようにツバメがやってきた。
ツバメは何日も、何回も家の中にはいってきた。
そして巣を作らずにあきらめた。

その次の年もまたツバメはやってきた。
少しの日数で簡単にあきらめた。
その翌々年はこなかった。そして、それからは来ないことになった。


2002年3月30日

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