鼠をくわえて歩く猫


猫が一匹。
三毛猫を飼っていた。

この猫は長寿で十何年間か家にいて、最後はひっそりと隠れるように死んでいった。

喉の下をなぜると、なぜるそのまえから”ぐ〜ぐ〜”と鳴くまねをする役者でもあった。
この三毛猫は僕が一番かわいがっていた。
母がしょうがなしに、残り物をエサにしていた。


猫はペットではなかった。鼠を捕る為に飼っていた。
そのことは猫にもわかっていた。本能がそうであったのかもしれないが。

鼠は米を食べる悪者だった。
米倉以外にも家の中にいっぱいいた。
家の天井にまでいて、ごろごろとはいまわっていた。

三毛猫は鼠と対峙する時があった。この三毛猫はすぐ飛びかかる事はなかった。
にらみあいで終わった。

情けない猫であった。

だがネズミを口にくわえて歩くことがよくあった。それは「死んだネズミをくわえている。」と笑われていた。
その理由はみんな知っている。ネズミをみても恐がるような猫だったから。

2002年4月21日

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