茂平のイチジクは売れに売れ (母の話)


作者記・口が開いたトウガキは”商品では無い”という、伝統と、伝説があった。
が、味も形も変わらないこの「口の開いたイチジク」は一挙に商品に成っていった。


口が開いたんが売れるようになったんじゃあない。


口が開く閑がない。とにかく”売ってくれ、売ってくれ”

(トウガキ畑で)仕事をする時は、自転車を隠す。自転車を見ればその畑に人がいる。人がいれば「売ってくれ」と頼める。

トウガキの出始めとおしまいは数が少ないんで箱単位でなく、パックでだす。(1箱は4パック)んだがパックの期間が長うなった。

前は日曜日は市場が休みで出荷していなかった。(そういう時で、しかも雨などがふると口が開いていたが)今は出荷の休みの日が無い。
なんぼうすくのうても取ってくれ、出してくれ。


しまいにゃ、(葉っぱも落ち選定をしている冬の日)剪定しょうる畑にきて「イチジクを分けてくれ」いわれた。
畑で仕事をしょうると、誰か車をとめた思えば「おばさん、イチジクぅわけてくれ」季節がすぎてもそういわれる。

ウチにも毎年「分けてくれ」いう人からのも、全部あげられんようになった。


ずえった『カンズメ』ようのイチジクも、「あの味がええ」ゆうて買うて行く。


2000・12・17

平成9年     平成